4558の謎に迫る!
 
エフェクターには「4558」という音響用のデュアル(2回路入り)オペアンプが
よく使われますが、同じ「4558」でも、メーカーが違うと(いわゆるセカンドソース)、
また、生産時期が違うと、音が変わってきます。


 オペアンプ4558とセカンドソース

 「4558」は元々、レイセオンのオペアンプで、RC4558P という型番が、TS808 などに使われていました。RC4558P は、1980年代にテキサスインスツルメンツからの販売となり、現在では Keeley が TS9 のモディファイに使用しています。
 「4558」には、同じテキサスインスツルメンツ(TI)の TL4558P や、新日本無線(JRC)の NJM4558D、日本電気(NEC)の uPC4558C、東芝のTA75558P などのセカンドソースがありますが、「どれも皆、中身は同じ」ではないんです。

 下の画像は、1989年のテキサスインスツルメンツのデータブックからの引用ですが、TL4558 が RC4558 の改良版であることが明記されていて、同じものでないことがわかります。データ的にはスルーレートが2倍近くに改良されています。
 ちょっと知っている方なら、他のメーカーにも TL4558P 同様に、「4558」のスルーレート改良品「4559」があるのをご存知でしょう。JRCなら NJM4559D、NECなら uPC4559C、東芝のTA75559P です。各社の対応表などを見ると、これらの「4559」が TL4558P 相当品ということになります。

 ちなみに、スルーレート(応答性)が高いほうが広帯域となり、高音が出やすくなります。
 実は、この「4559」(TL4558Pを含む)が 曲者なんです 〜。
 


 「4558」と「4559」

 それでは実際に、オシロスコープで、スルーレートを観てみましょう。

 オペアンプは、写真上のように、JRCの NJM4558D/NJM4559D、NECの uPC4558C/uPC4559C、東芝の TA75558P/TA75559P、シャープの IR94558/IR94559、TIの RC4558P/TL4558Pを用意しました。いずれも最近のものですが、NJM4558D と TA75558P は艶アリも加えてみました。
 ±15Vの電源でオペアンプをボルテージホロワとして使い、±2Vの方形波を入力したときの出力をオシロで観測します。すると、写真中のように、NJM4558D は NJM4559D より立ち上がりが遅い、即ち、スルーレートが遅いことが確認できます。
 ところが、写真下のように、RC4558P は TL4558P と立ち上がりがほとんど変わりません〜! TL4558P と同等のスルーレートを示すTIブランドの現行 RC4558P は、昔のレイセオンブランドの RC4558P とは性能が違うようです。

 スルーレート測定結果は、
@ JRC:  NJM4558D = 1.3V/μs、 NJM4559D = 2.2V/μs
@ NEC:  uPC4558C = 1.1V/μs、 uPC4559C = 2.0V/μs
@ 東芝:  TA75558P = 2.3V/μs、 TA75559P = 2.7V/μs
@ シャープ:  IR = IR94558 = 1.3V/μs、 IR = IR94559 = 2.4/μs
@ TI:  RC4558P = 1.9V/μs、 TL4558P = 2.1V/μs
@ 艶アリ:  NJM4558D = 1.1V/μs、 TA75558P = 1.7V/μs
となりました。

 もちろん、性能にはオペアンプの個体差もありますが、測定結果からは、JRC、NEC、シャープは「4558」と「4559」をきっちり作り分けているものの、東芝の TA74558P と TA75559P、TIの RC4558P と TL4558P は、同じものを型番だけ変えて売っているように見えます。「大は小を兼ねる」的な合理化を進める一方で、メジャーな「4558」の名前や、「RC」ブランドが捨てられないのではないでしょうか?

 ということで、長くなってしまいましたが、「4558」のセカンドソースには「4559」相当品があって、「どれも皆、中身は同じ」という訳ではありません。
 なお、NJM4558の現行品と艶アリは、スルーレートに関しては差がありません。